タイトル
少数多体系における原子核反応
ルール大学 鎌田 裕之
少数多体系における原子核物理学の興味は、粒子数(核子数や他の粒子の数)をふやすことにより、2核子の素過程で確立されたとする
Potential
を再確認することである。この
Consistency(無矛盾性)の概念は物理に限らず、科学全般に渡って最も大切な考えかたの一つである。典型的な場合、2核子間のPotential
を用いて3核子系がどれ程説明がつくかを問うものである。そして、3体系で新しく現れる3体力がどのようなものなのかを調べることである。
講義では、Schroedinger 方程式から出発し、Lippmann-Schwinger
積分方程式、Faddeev
3体理論
を間単に紹介し、その方法についても述べる。更に、3He核を標的とする電子散乱や4体問題,
Hyper
核への応用についても解説する。
原子核における少数多体系の直接的な課題は、2核子に働く核力だけではなく、3核子4核子に働く3体力、4体力がどのようなものなのかを定量的に研究することである。よく知られているように、2核子間に働く現実的核力は、古典的な中心力だけでなく強い斥力芯、強いテンソル力、軌道スピン力といった様々な特徴をもっている。このような性質が、数個の核子系の核反応にどのように現れて来るのかを調べることは興味深い。
ここでは、非相対論的な枠組みで理論を展開する。その導入の仕方は、ほとんど
heuristic で、従って物理を見通しのよいものにしていきたい。
先ず、核子-核子の系から始めることにする。その系は、色々な、基本となる概念や道具を説明するのに便利である。(第一章)
第二章で は、3体系のはじめとして3重水素(トリトン)について、ファデーフ3体理論形式を示す。また、それを表現するためのヤコビ座標を与え、具体的な計算方法、部分波表現を議論する。現実的なポテンシャルを用いてその結合エネルギーの計算値を示す。
更に、波動関数を使って運動量分布関数や相関関数を計算し、トリトンの構造を調べる。3体力を導入し、3体力を含めた計算による結合エネルギーを示す。
もくじ
第一章 二核子系
( 謝辞 )