3核子系における測定量は大変豊富である。偏極を考えなければ、弾性散乱と3核子分解(ブレイクアップ)に分類できる。弾性散乱の場合、前に示した組み替え
演算子 U を使って、散乱振幅は
(3.88)
によって与えられ、この絶対値の2乗は微分断面積を与える。
(3.89)
勿論、この時、始状態のスピンについて平均をとり、終状態のスピンについては和をとる。
ブレイクアップの場合はもう少し複雑で、
(3.90)
のように微分断面積は求まる。ここで、
,
は実験室系での運動量で、
は入射粒子の運動量。ここで、新しい変数 Sを導入した。
S
は運動学的に描かれる弧の長さを意味する。それを詳しく説明する。実験室系で、エネルギーと運動量の保存則は
(3.91)
(3.92)
と書けて、 を消去すれば、(
)
(3.93)
(3.94)
を得る。(3.94)式は k1 と
k2の座標面で楕円を描く。入射粒子の
と
,
の向きによって様々な楕円を描くことになる。以下の図では、E1-E2の面と共に物理的に許される領域を表している。エネルギーは常に正であることから、図で、黒丸で表した領域だけが物理的な事象を起し得る所となる。
正確に変数 S を定義すれば、
(3.95)
で、E1-E2面での円弧の長さに対応する。S=0の出発点を黒丸で示した所とし、時計周りでその長さを測る。
次に、偏極量について簡単に説明する。これについての詳しい定義は、Gerald
G. Ohlsen 等によってなされ、学祭的な合意を得ている。(G.G.
Ohksen, Rep. Prog. Phys. 35 (1972) 717-801.)
例えば、核子の 偏極分解能 (良く、重陽子のものと間違えられる)は、
(3.96)
で与えられ、重陽子の テンソル分解能
は
(3.97)
ここで、 は
である。
また、核子から核子への スピン偏極移行量Kyy'
は、
(3.98)
で求まる。これらの偏極量は弾性散乱とブレイクアップの両方にあり、散乱振幅を入れ替えるだけで、同様に計算される。