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九州工業大学大学院工学研究院 先端機能システム工学専攻
九州工業大学工学部 総合システム工学科

研究内容Research

ナノ構造物質を創る

【半導体量子ドット・ナノプレートレット】
 コロイド合成法により,寸法が数nm程度である「コア・シェル型の半導体量子ドット」(図1(a),(b))を化学合成しています。量子ドットの寸法や形状・構造などを制御することにより,発光色をはじめとする様々な発光特性を自由に制御できることから(図1(c)),この量子ドットは,発光材料としての応用が期待されています(応用例:LED,生体内分子のラベル化剤,単一光子生成光源など)。また近年,この量子ドットは,極めて高い光電変換効率が期待できる「量子ドット型太陽電池」の材料としても注目を浴びています。
 当研究室では,量子ドットを化学合成するとともに,量子ドットによる高次ナノ構造(例:一次元配列構造,蛋白質分子との結合系,量子ドット型太陽電池など)を作製しています。



図1: (a)量子ドットの模式図,(b)量子ドットの電子顕微鏡像,(c)量子ドットを分散した溶液の発光画像(UV光照射時)。

 ●コアシェル型U-Y族量子ドット・量子ロッド
 ●ナノプレートレット
 ●ナノプレートレットを入れた微小光共振器

【有機半導体】
 π電子系を持つ有機色素分子を溶媒中に分散すると,互いに分子間力が働くことにより自己組織的に一次元配列構造を形成することがあります。このような自己組織化反応を利用し「J会合体」と呼ばれる有機色素分子による一次元配列構造体を作製しています(図2(a))。J会合体では,「フレンケル励起子」と呼ばれる電子状態が形成されることにより,特有の光学特性(図2(b))が発現します。この光学特性は,昔から銀塩写真の増感剤の動作に利用されるとともに,近年では太陽電池の増感材としての利用が期待されています。
 当研究室では,J会合体を化学合成するとともに,J会合体による高次ナノ構造(例:J会合体を束状に凝集させたフィブリル構造J会合体,微小光共振器構造(図2(c))など)を作製しています。



図2:(a)J会合体の模式図,(b)J会合体の光学特性,(c)J会合体微小光共振器。 

●J会合体 ●フィブリル構造J会合体 ●J会合体を入れた微小光共振器構造 

ナノ光物性を測定する

 ナノスケールの物質中における電子や正孔には,このスケール領域に特有の
 ・量子閉じ込め効果(図3(a))
 ・表面効果(図3(b)))
が働きます。これらの効果により,ナノスケールの物質は,全く新しい光物性(”ナノ光物性”)を示すことがあります。ナノ光物性は,近年,多種多様な応用利用が期待されており(「ナノ構造物質を創る」の項目参照),一部は実用化されつつあります。
 当研究室では,新規ナノ光物性の探索と理解,そしてその制御を目指し,ナノ構造物質の光学特性の精密計測(顕微分光計測(図3(c)),超高速時間分解計測など)を行っています。



図3:(a)タイプT型量子ドット,および,タイプU型量子ドットにおける量子サイズ効果,(b)単一量子ドットにおける発光明滅現象の周辺環境依存性(表面効果を反映した現象の一例)(c)レーザー顕微鏡システム。写真中央部は,試料を冷却するためのクライオスタット。 

 ●顕微発光計測(レーザー分光,発光画像,偏光,スペクトル,時間分解,時間相関)
 ●超高速時間分解計測 ●電子顕微鏡観察 ●原子間力顕微鏡観察

ナノ光物性を利用する

 これまでの「ナノ構造物質の作製」や「ナノ光物性の計測」の経験の中から得た技術を利用した,新規計測システム(図4)や新規センサーの開発を行っています。また,独自の設計に基づく量子ドット型太陽電池の開発に取り組んでいます。



図4:独自に開発した顕微計測システムの一例

 ●顕微計測システムの開発,●センサーの開発,●光電子デバイスの開発
 ●制御・解析用プログラムの開発