最終更新期日:2011.12.7
原子力概論
第3・4年次 後学期 選択2単位
担当教員 岡本 良治
1.目的
原子力は核兵器、原子力発電、医療用、非破壊検査など多くの分野で利用されている。
しかし、近年は原子力発電をめぐる問題は、事故の危険性、エネルギー資源の選択、
地球環境問題などと関連して社会問題化している。本講義の目的は原子力(核エネル
ギー)をめぐる基本的事実と諸問題を、理工系学部の学生として科学的に判断できる
ように、原子核と放射線についての基礎的知識と論点を教授することである。
2.授業経過と予定((水)2限目;5−2A教室)
授業経過と通知については
情報科学センターの学習支援システム(MOODLE)内の
専門共通科目「原子力概論」クラスにて行う。そこへのアクセスのために必要なパスワードに
ついては1回目の授業中に紹介する。
3.参考資料
1)はじめに
説明(要点): 自然における原子核現象と社会における原子力・核問題
説明:自然における原子核現象と社会における原子力・核問題
図:自然の階層性
2)原子分子の世界
解説:物理学における文字と、文字式の意味
解説:原子
例題:原子と原子核の比較、関係
例題:電気力と重力の比較(原子内には強い電気力が働いていること)
例 題:原子の大きさ、単位体積あたりの個数
3)解説:原子核の基本的性質
2核子系の不思議
核力と核構造
特殊相対論の要点と質量欠損と結合エネルギー
核子あたりの結合エネルギーの質量数依存性と核図表
参考:原子核の中に電子は束縛できるか
例題:α粒子の結合エネルギーと光分解 2011.12.7ミス修正(三重水素質量)+加筆
例題:結合エネルギー、質量欠損
4)放射性崩壊
解説:原子核の放射性崩壊
例題:212Poと226Raの放射能毒性の比較
例題:体内のK40の放射能の強さ
例題:崩壊熱とは何か
例 題:崩壊系列 (ウラン238核の半減期は約45億年)
5)原子核反応
解説:原子核反応
反応の断面積(図)
例題:ホウ素による熱中性子吸収反応
参考:空気中における高速中性子の平均自由行程
参考:鉄に対するニュートリーノの平均自由行程
6)放射線と物質の相互作用
解説:放射線と物質の相互作用
光電効果(図)
ベータ線(高エネルギー電子の流れ)と物質粒子との相互作用(図)
電 子陽電子対発生・対消滅・負エネルギー電子の海としての真空(図)
ガンマ線と物質粒子の相互作用(図)
例題:コンプトン散乱
例題:ガンマ線(X線)の鉛による減衰
7)放射線の利用と防護
ウィルソン霧箱による放射線飛跡の観察実験 (実施予定)
放射線の種類による透過率の違いと遮蔽(しゃへい)法(図)
例題:放射線の影響
参考:生体内の化学物質の放射性同位元素の追跡結果の意味すること
参考文献:
佐藤満彦「放射能は怖いのか」(文芸春秋社、文春新書、2000年)
近藤宗平「人は放射線になぜ弱いかー第3版」(講談社ブルーバックス、1998年)
安斉育郎「食卓の放射能汚染」(同時代社、1988年)
市川龍資「暮らしの放射線学」(電力新報社、1988年)
菅原 努編「被曝 日本人の生活と放射線」(マグブロス出版、1988年)
菅原 努、上野陽里「放射線基礎医学(第6版)」(金芳堂、1986年)
菅原 努監修「放射線はどこまで危険か」(マグブロス出版、1985年)
近藤宗平「分子放射線生物学」(学会出版センター、1972年)
8)核分裂とその連鎖反応
解説:核分裂とその連鎖反応
核分裂と解放されるエネルギー、核分裂生成物(図)
核分裂連鎖反応と臨界条件(図)
例題:核分裂によるエネルギーと電気的斥力エネルギー
演習プリントへの質問と回答2003.2.13
9)原子炉の原理と構造
例題:熱中性子炉における減速材
例題:原子炉におけるウラン235の燃焼量
10)原子炉の動特性
解説〔要点〕原子炉の動特性と制御 2011.10.19更新
11)原子力発電の諸問題
例題:原子力発電の諸問題(資源問題、環境問題、経済性、核兵器拡 散)
12)核融合入門
ビデオ「元素誕生の謎にせまる」(理化学研究所編) (鑑賞予定)
例題:DD核融合反応におけるクーロン障壁と熱平衡温度
13)核兵器の原理・構造・効果
解説::核兵器の原理
図:ブースター原理(核融合物質の添加による核分裂効果の促進)
例題:核兵器使用の物理的効果 漢字変換ミスを修正 2010.2.16
広島原爆、長崎原爆(模型)
http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/owa/dict_src?opt=1&dic_no=1722&synon_no=01
3.評価方法
中間試験(30%)、期末試験(40%)、レポート(30%)という割合で評価する。
前半レポート課題
4.履修上の注意事項
基礎学力として物理学I、物理学UA・UBを履修しておくことが望ましい。
統計力学、量子力学も履修していれば、本講義の理解はより深まると思われる。
原子力(核)問題については、新聞、雑誌等に数多く学習材料が現れるので、
これらのことに自主的に関心をもち、資料を収集分析することが望まれる。なお、
関連する専門学科の諸科目にもしばしば関係する話題ができると思われるので、
相互の関連性も意識的に考えておくことが望ましい。
5.教科書・参考書(教科書1、参考書2−5の予定)
1.講義プリント(または、このHP内の該当するファイル)
2.日本原子力学会編
「原子力がひらく世紀」、1998年
3.日本原子力学会編「ミクロ科学とエネルギー.」. コロナ社, 1999
図書番号429、N-5
4.大山 彰「現代原子力工学」(オーム社)図書番号 539 11 O-4
5.電気学会編「基礎原子力工学」(オーム社)図書番号 539 11 D-4
6.成田正邦、小沢保知「原子工学の基礎」(現代工学者)図書番号 539 11 N-10
7.日本学会編「原子力発電の諸問題」(東海大学出版会)図書番号 539.7 11 N-4