2核子の場合に既に導入したように、2体系の部分波表現の基底は、

(2.60)

によって与えられ、第3の粒子を記述するために、次の基底を追加する。

(2.61)

ここれで、ラムダは q の軌道角運動量である。 j I の角運動量の合成により、3体系全体の全スピンJ を得る。アイソスピン空間も 2体系の t と第3粒子の 1/2 による合成で、全アイソスピン T を得る。

(2.62)

これらの表記を簡単に | p q > と書き、これを状態チャンネル、或は単にチャンネルとよぶ。3体の基底の完全性を書き表せば、

(2.63)

と与えられる。  ここで、2体部分系に反対称状態の物理的な要請として

の条件の下で、ファディーフ要素を書き表す。

(2.64)

このことから、(2.59)式のファディーフ方程式は、部分波表現によって以下のように与えられる。

(2.65)
(2.66)

(2.51)式の t-matrix もつぎのように表現できる。

(2.67)

t-marix が2体の軌道角運動量 l について対角的でない場合、即ち、異なる l に結合する場合を考慮して、次のように書くのが正確である。

(2.68)

(2.69)

付録に示すように、粒子交換演算子 P  が3体問題を難しくする原因であるが、結局の所、次のようにまとまる。

(2.70)

ここで、π1 π
(2.71)

(2.72)
で与えられる。G_' は純粋に幾何的な量である。(2.69)式は、
(2.73)

となる。この段階で、ファディーフ方程式は pq の2つの連続変数に対する連立積分方程式といえる。2体の部分波を制限すれば、典型的なチャンネルの選択例として5チャンネルの場合を以下に示す。

(表)

この場合、2体の部分波は1S0, 3S1-3D1の2つの状態だけしか取り込んでいないが、3重水素(トリトン)の結合エネルギーのほとんどを説明する。

ここで、具体的にファディーフ方程式を解くための技術的な点にふれる。(2.71)式と(2.72)式から明かに、x の角度積分をするためには、任意の p=π1, p'=π が必要になる。従って、計算機にそれをさせるためには関数の内挿法が必要になる。即ち、一般に関数 f(x)
(2.74)
の様に近似する。この場合、 f(xk) はデータとして常に計算機の記憶装置に蓄えておき、必要に応じて 内挿関数 S_k(x)により、任意の x にたいする f(x)を求めるものである。この、最初のデータとする x の点のセット{x}は、例えば、t-matrix の積分方程式を解くときに決める。通常、その積分点は、ガウス積分法によって求められる。このようにして、計算機に乗せる場合、pq の2変数に対して、積分点のセット{pn,qm }を準備する。このことから、(2.73)式を計算機で計算するための最も具体的な表現を示せば、
(2.75)

(2.76)

を得る。ここで、計算の規模について説明する。大きさはその次元によって特徴づけることができ、この場合、

(2.77)

で与えられる。典型的な数として、Np Nq それぞれに対して、34点、20点である。チャンネル数はポテンシャルの数に依って制限を受けるが、その指標として j の最大値を選べば、

(2.78)

のそれぞれに対して N_ は次の様に増加する。

(表)

より現実的な計算をするためには少くても jmax=4 が必要で、その条件の下では N ~ 25000 の次元となる。この様に大きな次元の行列の対角化にはLanczos方法が最も早くそして経済的な方法として多く用いられている。


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