Kyutech物性グループセミナー (2013-)
参加者一覧:
堀田善治 (基礎科学研究系・特任教授)http://hz-hp.zaiko.kyushu-u.ac.jp/horita_lab
出口博之 (基礎科学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-1/entry-530.html
松本要 (物質工学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t4/t4-1/entry-474.html
小田部荘司 (物理情報工学研究系・教授) http://www.ccr.kyutech.ac.jp/professors/iizuka/i4/i4-1/entry-575.html
美藤正樹 (基礎科学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-1/entry-540.html
石丸学 (物質工学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t4/t4-1/entry-2458.html
宮崎康次 (機械知能工学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t1/t1-1/entry-478.html
松平和之 (電気電子工学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t3/t3-2/entry-548.html
田中啓文 (生命体工学研究科人間知能システム工学専攻・教授) http://www.ccr.kyutech.ac.jp/professors/wakamatsu/w2/w2-1/entry-3434.html
福間康裕 (物理情報工学研究系・教授) http://www.ccr.kyutech.ac.jp/professors/iizuka/i4/i4-1/entry-1140.html
堀部陽一 (物質工学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t4/t4-2/entry-2707.html
渡辺真仁 (基礎科学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-2/entry-1142.html
中村和磨 (基礎科学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-2/entry-2708.html
飯久保智 (九州大学・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/wakamatsu/w1/w1-3/entry-747.html
徳永辰也 (物質工学研究系・准教授) http://w3.matsc.kyutech.ac.jp/mesoscopic/index.html
小田勝 (基礎科学研究系・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-2/entry-2710.html
堀出朋哉 (物質工学研究系・准教授) http://www.ccr.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t4/t4-2/entry-2715.html
田中将嗣 (基礎科学研究系・助教) http://www.ccr.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-3/entry-2826.html
第五十一回: 2020年3月27日(金) 13:30-17:10
【ポスター】 2020kyutech-seminar.pdf
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス・コラボ教育支援棟3階セミナー室
飯塚キャンパス飯塚AV講演室 (TV会議システムを使って中継を行います)
【タイトル】 物質科学における実験と理論
【研究会趣旨】
今回の Kyutech 物性セミナーでは物質科学をとりあげます。物質・材料の特性・機能を調べたり,あるいは,
そこで得た理解を応用して物質の新機能の開拓や機能向上のための方策を研究したりする分野が 「物質科学」 です。
現在,物質科学研究では,理論と実験がチームを組んで研究課題に取り組むことが一般化しています。理論研究者と
実験研究者が共同の具体的目標に向かって知恵を絞り,「チームとしての最大限の力」 を発揮することが
求められています。今回の講演会では,こうしたチーム研究を主導的に行ない,表面・界面科学,スピントロ二クス,
鉄鋼材料研究など物質科学の様々な分野で大きな成果を上げられてきた方々に御講演を頂きます。
物質科学研究で成功するための研究グループのあり方が分かるはずです。
13:30-14:20
【タイトル】表面構造研究における実験と計算の協奏
【講演者】 尾崎泰助
(東大物性研/教授)
【概要】
炭素からなる蜂の巣構造: グラフェンは熱力学的にも安定な構造ですが,そのシリコン版であるシリセンは理論的な
観点から仮想構造として研究されてきたものです。しかし近年,理論的な産物であったシリセン構造が金属基板上で
実験的にも見出されています。またそれに続いてジャーマネンやボロフェン等の新しい二次元物質も次々に実験的に
発見されています。第一原理計算はこれらの新規二次元物質の結晶構造・電子構造の解明において重要な役割を
果たしてきました。表面構造研究における実験と計算の協奏に関して第一原理計算の立場から我々の研究 [1-7] を
紹介致します。
[1] 高村(山田)由起子,尾崎泰助,応用物理学会誌 第86巻 第6号 488 (2017).
[2] T. Ozaki and C.-C. Lee, Phys. Rev. Lett. 118, 026401 (2017).
[3] A. Fleurence et al., Phys. Rev. Lett. 108, 245501 (2012).
[4] C.-C. Lee el al., Phys. Rev. B 95, 115437 (2017).
[5] C.-C. Lee et al., Phys. Rev. B 97, 075430 (2018).
[6] K. Yamazaki et al., J. Phys. Chem. C 122, 27292 (2018).
[7] C.-C Lee et al., Phys. Rev. B 100, 045150 (2019).
14:20-15:10
【タイトル】 磁気異方性の制御
【講演者】 小田竜樹 (金沢大理工/教授)
【概要】
磁性材料は,その不揮発性と省エネルギー性から社会生活に必要不可欠である。その基礎物性量である
磁気異方性エネルギーを現代科学の第一原理から評価することが可能となってきた。物質中電子の
スピン状態と軌道運動状態を間接的に変えることで異方性を制御する。磁気メモリ材料開発へ貢献する
計算物質科学研究の一端を紹介する。
15:10-15:45
【タイトル】キラル磁性体CrNb3S6のX線磁気円二色性実験 〜軌道角運動量の観測とキラルソリトン格子の閉じ込め効果〜
【講演者】美藤正樹 (九工大院工/教授)
【概要】
一軸的ジャロシンスキー-守谷 (D-M) 相互作用ベクトルと有するインターカレート系化合物 CrNb3S6 は,
130
K以下でヘリカルな磁気構造を有し,らせん軸に垂直に直裕磁場を印加すると,強磁性配列の中に
ソリトンが周期的には並んだキラルソリトン格子(CSL) なる磁気超格子構造が安定化される。2012 年の
戸川らのローレンツTEM による CSL の観察以降,CSL
の物性に関する数多くの研究が行われているが,
D-M
相互作用の起源である軌道角運動量の実験的評価は行われてこなかった。そこで,我々はSPring8
においてX線磁気円二色性 (XMCD) 実験を実施し,軌道角運動量がスピン角運動量の 1 % 程度であることを
明らかにした [Phys. Rev. B (2019)]。また,キラルソリトン格子の形態を試料形状によって制御できることを
実験的に明らかにし,トポロジカルなオブジェクトを有する磁気構造ならではの現象を観測することに成功した
[Phys.
Rev. B (2018)]。
休憩 (15:45-15:55)
15:55-16:45
【タイトル】 第一原理電子状態計算プログラムの開発と応用
【講演者】吉本芳英 (東大院情報理工/准教授)
【概要】
物質の電子状態を計算する手法は,様々なものがあるが,その中でも密度汎関数法,平面波基底,
擬ポテンシャルの組み合わせによるものは汎用性と経済性に優れており,適切に実装すれば
今日の計算機の能力をうまく引き出せるものでもある。この講演ではこの手法の技術的側面を解説するとともに,
著者が行ってきた拡張や応用計算について説明する。
16:45-17:20
【タイトル】 高圧巨大ひずみ加工に伴う同素変態挙動のその場観察
【講演者】 堀田善治 (九工大院工/特任教授)
【概要】
巨大ひずみ加工を高圧下で行うことにより,抜圧後でも高圧相を常圧で存在させることが可能となる。
純TiやZnOで生じるこのような同素変態挙動をSPring-8の高輝度X線を使ってその場解析した。
転位など格子ひずみで生じた内部応力が高圧相の安定化にかかわることが示された。
第五十回: 2020年 1月28日(火) 16:30-18:00
【場所】
(戸畑)本部棟3F 3F1会議室
(飯塚)研究管理棟3F 第2会議室
【講演者】
田中啓文 (生命体工学研究科人間知能システム工学専攻) http://www.brain.kyutech.ac.jp/~tanaka/
【タイトル】
ナノマテリアルによるニューロモルフィック演算
【概要】
近年深層学習の優れた計算能力が広く認知され,人工知能の実応用が急速に広がっている。一方で,
人工知能アルゴリズムを実行するハードウェアは,シリコンCMOS技術のスケーリングの物理的限界に直面し,
性能向上は頭打ちである。このため神経情報処理系である人工ニューラルネットワークやその応用形である
深層学習システム (以下これらを人工知能システムと呼ぶ) を物理的に実装するハードウェア技術と
それを支える新しい材料・デバイスへの関心が高まっている。求められるデバイス機能として,従来の
計算システムと決定的に異なるのは,ダイナミクスの利用である。ナノマテリアルの非線形性や
ネットワーク構造を巧みに用いることで,自発的にパルスやノイズを発生するデバイスの実現が期待される。
これらのデバイスは人工知能システムの飛躍的な低消費電力化や高集積化を可能とする。また,
ニューラルネットワークの学習プロセスでは,重み付き加算 (積和演算) 部分の重みを絶えず変更し記憶する
必要性があり,これに代わる電力消費量の小さいデバイスも求められる。我々は分子やナノカーボン
マテリアルを用い,ニューラルネットワークに置き換わる機能を実現する研究を進めている。講演では
これらナノマテリアルとネットワークの形成,機能化のポイント,および我々の最近の研究成果について紹介する。
第四十九回: 2019年 12月23日(月) 16:30-18:00
【場所】
(戸畑)本部棟3F3F1会議室
(飯塚)研究管理棟3F第2会議室
【講演者】
小田部荘司 (電子情報工学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/iizuka/i2/i2-1/entry-575.html
【タイトル】
Time-Dependent Ginzburg-Landau方程式を用いた超伝導線材中の3次元量子磁束構造のシミュレーション
【概要】
横磁界下での超伝導体内の磁束線を留めるピンについての様々な条件の違いよって
臨界電流密度J_cが変化することが知られている。一方,Time-Dependent
Ginzburg-Landau方程式
(TDGL方程式) は非定常状態の超伝導を記述することができる現象論的モデルとして使われており,
TDGL方程式を元にした量子化磁束線の動きに関する研究が多く存在する。そこで,本研究では
細い線における近似を用いた3次元のTDGL方程式を,数値的に解くことによって,横磁界下での
超伝導体内の量子化磁束線の動きを視覚的に表現し,様々な形状を持つピンにおける臨界電流密度の
磁界依存性(J_c-B)および,柱状ピンにおけるJ_cのピンの角度依存性について調査を行った。
第四十八回: 2019年 11月7日(木) 16:30-18:00
【場所】
(戸畑)本部棟1F TV会議室
(飯塚)研究管理棟2F TV会議室
【講演者】
日夏幸雄 (北海道大学大学院理学研究科化学専攻・名誉教授) https://wwwchem.sci.hokudai.ac.jp/~inorg/member/yukio-hinatsu/
【タイトル】
希土類が物性の主役となる酸化物の多彩な構造とその磁気的性質
【概要】
希土類は遷移金属と比べイオン半径が大きいため,ペロブスカイト型酸化物ABO_3_では,その磁気物性を決定する
Bサイトに入らず,Aサイトに入るため,物性の主役とならない。しかしながら,Ru,Re,Irなどの+5価の4d, 5d遷移金属と
希土類と組み合わせることにより,これらの元素をABO_3_のBサイトに入れた一連の複合酸化物A_n_L_n_M_n-1_O_3n_
(A =Sr, Ba; M = Ru, Re, Ir; n = 2-4) を合成した。そこでその多彩な構造と磁気的性質を中心に紹介する。さらに,希土類と
4d,5d遷移金属の比が3:1の蛍石型派生化合物(Ln_3_MO_7_)の構造と磁気的性質についても述べる予定である。
第四十七回: 2019年 10月17日(木) 16:30-18:00
【場所】
(戸畑)本部棟1F TV会議室
(飯塚)研究管理棟2F TV会議室
【講演者】
飯久保智 (生命体工学研究科生体機能応用工学専攻・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/wakamatsu/w1/w1-3/entry-747.html
【タイトル】
鉄鋼材料中の水素の挙動に関する第一原理計算 (後半)
【概要】
環境に対してクリーンな水素は次世代のエネルギー源として注目されています。その水素を燃料とした
燃料電池の開発に注目があつまる一方で, 関連する構造材料についても耐水素脆化性の対策が急務と
なっています。軽元素である水素は, 実験的に微視的な状況を明らかにすることが難しいため,
計算機シミュレーションを援用することによって理解が深まると期待されています。本セミナーでは,
グループで最近行った鉄鋼材料中の水素の挙動に関する第一原理計算について講演いたします。
@ 鉄中の水素の挙動調査,
A 鉄鋼材料中の添加元素と水素の相互作用,
B 鉄の結晶構造に水素が与える影響
などについて, 時間の許す限りご紹介したいと思います。
第四十六回: 2019年 9月2日(月) 16:30-18:00
【場所】
(戸畑)本部棟3F3F1会議室
(飯塚)共通教育研究棟1FAV講演室
【講演者】
飯久保智 (生命体工学研究科生体機能応用工学専攻・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/wakamatsu/w1/w1-3/entry-747.html
【タイトル】
鉄鋼材料中の水素の挙動に関する第一原理計算 (前半)
【概要】
環境に対してクリーンな水素は次世代のエネルギー源として注目されています。その水素を燃料とした
燃料電池の開発に注目があつまる一方で, 関連する構造材料についても耐水素脆化性の対策が急務と
なっています。軽元素である水素は, 実験的に微視的な状況を明らかにすることが難しいため,
計算機シミュレーションを援用することによって理解が深まると期待されています。本セミナーでは,
グループで最近行った鉄鋼材料中の水素の挙動に関する第一原理計算について講演いたします。
@ 鉄中の水素の挙動調査,
A 鉄鋼材料中の添加元素と水素の相互作用,
B 鉄の結晶構造に水素が与える影響
などについて, 時間の許す限りご紹介したいと思います。
第四十五回: 2019年 6月20日(木) 13:00-14:30
【場所】
(戸畑)7号棟2F204号室
【講演者】
堀田 善治 (基礎科学研究系・特別教授)
【タイトル】
高圧巨大ひずみ加工を利用した構造・機能材料の高性能化 (後半)
【概要】
加工しても形状が変わらない形状不変加工(いわゆる巨大ひずみ加工)で
大量ひずみを導入することにより結晶粒の超微細化を図ることができる。また,
巨大ひずみ加工は高圧下で行うことで脆性的な金属間化合物,セラミックス,
半導体にも適応できる特徴がある。併せて高圧印加に伴う相変態も利用できる場合
がある。金属材料では結晶粒微細化による高強度化や超塑性が出現する特性に
改質でき,金属間化合物,セラミックス,半導体も,それぞれが持つ機能性向上に
繋げることができる。本講演では,このような高圧巨大ひずみ加工のプロセスを
含め構造・組織解析および特性評価について紹介する。
第二回 Kyutech 物性ワークショップ: 2019年6月7日(金) 13:30 - 8日(土) 15:50
【タイトル】
新学術領域 J-Physics:多極子伝導系の物理 J-Physics地域研究会 - 北九州
特別セッション 「5d電子系における新物質と物性開拓」
【ポスター】
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス MILAiS
【研究会趣旨】
このたび第二回 Kyutech 物性ワークショップを開催いたします。新学術領域 「J-Physics: 多極子伝導系の物理」 と
共同して 「5d 電子系における新物質と物性開拓」 をテーマに取り上げます。5d 電子系は量子力学と相対性理論の
両方の特性が表れる興味深い物質群で近年の物性物理および物質科学研究の最重要トピックになっています。
今回のワークショップでは, 5d 電子系の新物質,新規物性をいかに開拓するか,徹底議論します。
【プログラム】
第四十四回: 2019年 5月24日(金) 16:30-18:30
【場所】
(戸畑)本部棟3F 3F1会議室
(飯塚)共通教育研究棟1F AV講演室 (TV中継)
【講演者】
堀田 善治 (基礎科学研究系・特別教授)
【タイトル】
高圧巨大ひずみ加工を利用した構造・機能材料の高性能化 (前半)
【概要】
加工しても形状が変わらない形状不変加工(いわゆる巨大ひずみ加工)で
大量ひずみを導入することにより結晶粒の超微細化を図ることができる。また,
巨大ひずみ加工は高圧下で行うことで脆性的な金属間化合物,セラミックス,
半導体にも適応できる特徴がある。併せて高圧印加に伴う相変態も利用できる場合
がある。金属材料では結晶粒微細化による高強度化や超塑性が出現する特性に
改質でき,金属間化合物,セラミックス,半導体も,それぞれが持つ機能性向上に
繋げることができる。本講演では,このような高圧巨大ひずみ加工のプロセスを
含め構造・組織解析および特性評価について紹介する。
第四十三回: 2019年3月29日(金) 14:00-17:10
【ポスター】 2019kyutech-seminar.pdf
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス・コラボ教育支援棟3階セミナー室
飯塚キャンパス飯塚AV講演室 (TV会議システムを使って中継を行います)
【タイトル】 物質の磁性
【研究会趣旨】 今回の kyutech 物性セミナーでは磁性をとりあげます。私達の世界は多くの電気・磁気に関わる
現象や製品であふれていますが,磁性とは何か簡単に説明できますか? 磁性は電流が流れると現れます。
つまり電荷が移動すると自動的にできます。また物質を構成する原子や電子にはスピンという磁石のもとになるものが
本来備わっています。今回の講演会では,前半でスピンを含む物質のミクロな世界のお話をして頂きます。物質内部が
いかに不思議な世界か分かるでしょう。後半では,より工学的テーマといえる磁石材料開発についての
前線的話題について御講演頂きます。新しい磁性材料を作ることがいかに私達の生活に直結しているか分かるでしょう。
14:00-14:50
【タイトル】 分裂するスピン
【講演者】 求幸年 (東京大学大学院工学系研究科 / 教授)
【概要】 ある種の磁性体では,極低温においてスピン液体と呼ばれる不思議な量子状態が実現する。
そこでは,電子のもつ基本的な自由度であるスピンが分裂し,マヨラナフェルミオンやエニオンといった
新しい素粒子が現れる。講演では,キタエフ模型と呼ばれる理論モデルを発端とした最近の爆発的な
研究展開を概観する。
--
14:50-15:30
【タイトル】 トポロジカル欠陥をなすドメイン構造
【講演者】 堀部陽一 (九州工業大学大学院工学研究院 / 准教授)
【概要】 遷移金属化合物の相転移では,様々な自由度の凍結に関係したドメインが形成される。
一部の化合物におけるドメインはしばしば特有の配列を持ち,トポロジカル欠陥としての特徴を示す。
本講演では,六方晶マンガン酸化物やカルコゲナイド化合物などに現れるドメイン構造について報告する。
--
休憩
15:30-15:40
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15:40-16:30
【タイトル】 計算科学とデータ駆動科学による永久磁石研究
【講演者】 三宅隆 ( 国立研究開発法人産業技術総合研究所,材料・化学領域 / 主任研究員)
【概要】 現代の高性能永久磁石は遷移金属と希土類を主成分とする希土類磁石である。本セミナーでは,
希土類磁石化合物の物性を第一原理計算に基づいて議論する。遷移金属の3d電子と希土類の4f電子の
相互作用により磁性が発現する電子論的機構や第3元素の役割を考察する。また,機械学習を活用した
新磁石物質探索について報告する。
--
16:30-17:10
【タイトル】 磁気Kerr効果顕微鏡を用いた永久磁石材料の磁区観察
【講演者】 竹澤昌晃 (九州工業大学大学院工学研究院 / 教授)
【概要】 磁性体の磁気特性は,磁性体内部の磁気的構造である「磁区」の構造に大きく依存するため,
磁石材料の開発において磁区構造を直接把握することは大変重要である。偏光が磁性体表面で反射される際に,
偏光面の回転や強度の変化が起こる現象 (磁気光学効果,磁気Kerr効果) を用いた磁区観察手法は,
試料に磁界や熱を加えながら磁区構造の変化を「その場観察」できる特徴があり,永久磁石材料においても
有用な観察技術である。本講演では,Kerr効果顕微鏡を用いて永久磁石材料等、磁性体の磁区観察を行った
事例について報告する。
第四十二回: 2019年1月30日(水) 10:30-11:30
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパスC-2F講義室
【講演者】 Prof. Dr. Javier Campo (Instituto de Ciencia de Materiales de Aragon, ICMA
(Spanish National Research Council (CSIC) - Zaragoza University, Spain), Director of ICMA
(スペイン ザラゴザ大学物質科学研究所 所長)
【タイトル】 Neutron scattering
experiments in the series A2FeX5H2O (A=Rb, K, NH4, X=Cl, Br):
Multiferroicity found in (NH4)2FeCl5H2O
【概要】 The number of magnetoelectric multiferroic materials reported to date is scarce,
as magnetic structures that break inversion symmetry and induce an improper ferroelectric
polarization typically arise through subtle competition between different magnetic interactions.
The (NH4)2FeCl5•(H2O) compound is a rare case where such improper ferroelectricity has been
observed in a molecular material. We have used single crystal and powder neutron diffraction
to obtain detailed solutions for the crystal and magnetic structures of (NH4)2[FeCl5•(H2O)],
from which we determined the mechanism of multiferroicity [1]. From the crystal structure analysis,
we observed an order-disorder phase transition related to the ordering of the ammonium counterion.
We have determined the magnetic structure below TN, at 2 K and zero magnetic field,
which corresponds to a cycloidal spin arrangement with magnetic moments contained in the ac-plane,
propagating parallel to the c-axis. Also Neutron Spherical Polarimetry, which is uniquely sensitive to
the absolute magnetic configuration and domain population, used in this work unambiguously prove
the multiferroicity [2]. The observed ferroelectricity can be explained, from the obtained magnetic
structure, via the inverse Dzyaloshinskii-Moriya mechanism. Here, also we present a neutron diffraction
study under external magnetic field, aimed at elucidating the evolution of the magnetic structure
under applied magnetic field (see figure 1), and determine the mechanism of magneto-electric coupling,
which allows us to describe an unprecedented change from spin current to spin-dependent
p-d hybridization mechanism [3]
[1] J. A. Rodríguez-Velamazán, O. Fabelo, A. Millán, J. Campo, R. D. Johnson, L. Chapon, Sci. Rep. 5, (2015) 14475.
[2] J. A. Rodríguez-Velamazán, O. Fabelo, J, Campo, J, Rodríguez-Carvajal, Navid Qureshi, L. C. Chapon Sci. Rep. 5, (2018) 10665.
[3] J. A. Rodríguez-Velamazán, O. Fabelo,
J. Campo, A. Millán, J Rodríguez-Carvajal, L. C. Chapon. Phys Rev B 95, (2017)
174439.
第四十一回: 2019年 1月11日(金) 17:00-18:30
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室 &
飯塚キャンパス研究管理棟2F TV会議室 (TV中継)
【講演者】 村上洋一 (高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所・教授)
【タイトル】 鉄系超伝導体LaFeAsO1-xHxの超過剰ドープ領域に出現する反強磁性相
【概要】 鉄系超伝導体では銅系酸化物超伝導体とは対照的に、超伝導に関与する
3d電子軌道が複数個存在するために,スピン揺らぎだけでなく軌道揺らぎがクーパー対
形成機構に重要な役割を果たしていることが指摘されてきた。本研究の対象物質である
LaFeAsO1-xHxでは,酸素の置換イオンとしてH-を使うことにより,多くの電子をFeAs層に
ドープすることができる。LaFeAsO反強磁性相(AF1相)に電子をドープしていくに従って,
2つの超伝導相(SC1相とSC2相)が順次現れ,さらにドープをするとx=0.5付近で,新たな
反強磁性相(AF2相)が出現することが分かった。このAF2相は構造的には中心対称性が
破れており,AF1相と比較して大きな磁気モーメントを持ち局在性が強まっている。さらに他の
鉄系超伝導体とは異なり,スピンギャップがゼロであることが明らかになった。これらの結果は,
ドープ量を増加させていくと,多軌道状態からdxy軌道のみが実効的に重要となる単軌道状態に
変化するというバンド計算の結果と整合しており,AF2相はSC2相の母相であると考えられる。
この状況はdx2-y2軌道が主要な役割を果たす銅系酸化物超伝導体と類似しており,少なくとも
過剰ドープ領域では,クーパー対形成機構としてスピン揺らぎが重要であると考えている。
最後に,水素イオンの量子ダイナミクスを利用した超伝導ギャップの決定法についても報告する
予定である。
第四十回: 2019年 4月17日(水) 16:30-18:00
[2019年 1月10日(木) 16:20-17:50 (延期)]
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室 &
飯塚キャンパス研究管理棟2F TV会議室 (TV中継)
【講演者】 徳永辰也 (物質工学研究系・准教授)
【タイトル】 CALPHAD法の基礎と応用
【概要】 CALPHAD (CALculation of PHAse Diagrams) 法は,相境界や熱力学物性値などの
実験データの熱力学的解析に基づいて計算により状態図を作成する手法であり,これまでに
鉄鋼材料をはじめとする各種材料の設計・開発において広く用いられている.さらに,最近では
第一原理計算とのカップリングにより,安定領域のみならず準安定領域の相平衡についての
計算結果の信頼性も向上している.本セミナーでは,はじめにCALPHAD法の基礎について
概説した後で,CALPHAD法で得られた計算結果の応用例について紹介する.
第三十九回: 2018年 9月4日(火) 14:40-15:40
【ポスター】 2018-39th-kyutech-seminar.pdf
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス8-1A講義室
【タイトル】 Biaxial molecular-colloidal nematic liquid crystals
【講演者】 Ivan I. Smalyukh (Department of Physics, Department of Electrical, Computer, and
Energy Engineering, Materials Science and Engineering Program and Soft Materials Research Center,
University of Colorado, Boulder, CO 80309, USA)
【講演者紹介】 液晶の専門家で,最近ホップフィオンを実験的に検証してNature 誌に
投稿しておられる気鋭の研究者です。最近では,ソリトン(1次元欠陥),スキルミオン(2次元欠陥),
ホップフ ィオン (3次元欠陥) がトポロジー的に保護され安定化されていることで,研究が活発化して
います。ソリトンは扱いやすく,スキルミオンは扱いにくく,ホップフィオンは扱いやすいのではないかと
思われています。液晶ソリトンは,フレデリクス転移として知られ,現在のディスプレイ実用化の成功因と
なっています。スキルミオンはB-Phaseとして知られ,すでにサムソンが10倍速い液晶として研究を
始めている模様です。ホップフィオンに関しては,理論は論文がありますが,実験的に見たのは
彼しかいません。液晶としても面白いですが,スピンに応用出来たらもっと面白くなるはずです。
【概要】 Coexistence of order and fluidity enables functioning of biological
membranes and
liquid crystal displays alike, but only a few of many possible distinct realizations of such
ordered fluid states have been demonstrated so far. I will discuss how we disperse micrometer-
long inorganic colloidal rods in a nematic fluid host of nanometer-long rod-like organic molecules [1].
These building blocks, while freely diffusing around, interact to spontaneously form an orthorhombic
biaxial nematic fluid, in which like-sized rods are roughly parallel and the molecular ordering direction
is orthogonal to that of colloidal rods. Using nonlinear optical microscopy and Raman spectroscopy,
we study the low-symmetry orientational distributions of both molecular and colloidal rods.
We construct a detailed temperature-concentration phase diagram that contains two uniaxial and
one biaxial nematic phases, as well as two-phase coexistence regions [1]. Displaying properties of
biaxial optical crystals, our hybrid molecular-colloidal fluids can be switched by electric and
magnetic fields and promise a host of technological uses ranging from new breeds of displays to
metamaterials. I will discuss how similar ideas can be dextended to colloidal inclusions with
other shapes and how they enable realization non-othorhombic biaxial nematics and polar ordered
fluids with low symmetry and high degrees of orientational order.
第三十八回: 2018年3月30日(金) 14:40-17:50
【ポスター】 2018kyutech-seminar.pdf
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス・コラボ教育支援棟3階セミナー室
飯塚キャンパス飯塚AV講演室 (TV会議システムを使って中継を行います)
【タイトル】 超伝導と熱伝導
【研究会趣旨】 いま物質科学では超伝導と熱伝導に関する研究がホットです。これらの現象制御と
最適化に環境材料研究の新しい方向性を見ているからです。現在、理学から工学ひいては企業まで
の多くの研究者を巻き込んで新しい超伝導体・熱伝導体の探索、またこれらを用いた新デバイス開発の
世界的競争が行われています。このたび,これらのトピックに関して大きな成果を挙げている気鋭の
若手物質科学研究者を招いて講演を行って頂きます。これらの問題の最前線とは何か、われわれは
何を目指すべきか、今後の展望について講演して頂きます。
14:40-15:25
【タイトル】 拡張多極子による多様な交差相関現象
【講演者】 楠瀬博明 (明治大学理工学部 / 教授)
【概要】 電子の電荷・スピン・軌道が絡み合った自由度は、微視的な多極子
として統一的に記述できる。電気磁気効果に代表される多様な交差相関現象は、
複数の原子サイトや複数の軌道にまたがった「拡張された」多極子と密接な関係が
あることが明らかになってきた。講演では、拡張多極子による交差相関現象を
いくつかの例を交えて紹介する。
--
15:25-16:10
【タイトル】 強相関系の数値的研究: フラーレン超伝導体の研究・機械学習の技術を使った多体系ソルバー
【講演者】 野村悠祐 (東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 / 助教)
【概要】 講演ではフラーレン超伝導体と機械学習ソルバーの開発の2点を取り上げる。
前半では、モット絶縁体相を示すフラーレン超伝導体が、なぜs波の超伝導を示すのか
(普通はs波超伝導は強相関領域では発現しない)ということを第一原理的に研究した
成果を報告する。後半では、機械学習で用いられてきた柔軟な関数形と
これまでの物性物理で使われていた変分波動関数を組み合わせることによって、
飛躍的に量子多体系を解析する精度が向上できることを報告する。
--
休憩 16:10-16:20
--
16:20-17:05
【タイトル】 有機−無機ハイブリッド材料の低熱伝導率
【講演者】 宮崎 康次 (九州工業大学 工学研究院 / 教授)
【概要】 印刷できるフレキシブルな熱電変換モジュール作製のため,無機材料に
有機材料を混ぜたハイブリッド材料をインクとして熱電薄膜を生成したところ,
従来の経験式では説明できない極めて低い熱伝導率が測定された。この低い
熱伝導率の原因として有機−無機材料間に存在する界面熱抵抗に着目し,
有機−無機材料からなる積層薄膜を生成して,界面熱抵抗を測定することで
現象を考察した.
--
17:05-17:50
【タイトル】 フォノンと格子熱伝導率の第一原理計算
【講演者】 只野央将(国立研究開発法人物質・材料研究機構 / ICYS研究員)
【概要】 高性能の熱電材料や排熱・断熱材料の開発には、熱の主な担い手
であるフォノンのダイナミクスと散乱過程を微視的に理解し、それを制御する事が
欠かせない。近年、固体の格子熱伝導率や非調和効果を含んだフォノン分散の
第一原理計算手法が開発され、その有効性がさまざまな系で実証されつつある。
本講演では、近年の第一原理フォノン計算の発展を概観し、熱電材料への応用例を
報告する。
第三十七回: 2018年 2月28日(水) 17:00-18:00
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス本部棟3F
3F1会議室 &
飯塚キャンパス研究管理棟3F第2会議室 (TV会議システムを使って行います)
【タイトル】 ユビキタス酸化物による新規機能性誘電体の設計と開発
【講演者】 谷口博基 (名古屋大学・准教授) http://vlab-nu.jp/member/134.html
【概要】 電場の印可によって電気伝導率を制御するトランジスタの開発がエレクトロニクスの
飛躍的な発展を導いたことからも明らかなように、入力と出力をつなぐ応答(輸送)特性の研究は
先端技術開発において特に重要である。その中で、物質に加える電場とそれによって生じる
分極をつなぐ誘電応答は、キャパシタやフィルタ、センサとして広く応用されており、今日の
電子デバイスを土台から支える応答特性である。我々のグループでは結晶構造デザインと
欠陥制御の両側面から、地球上に豊富に存在する酸化物(ユビキタス酸化物)による新しい
誘電応答機能性材料の開発に取り組んでいる。本講演では、光による誘電応答特性の制御を
可能にする光応答性誘電体の開発と弾性的不安定性によって誘起される間接型強誘電性相転移の
創出の2点に焦点を絞り、これらに関する最新の成果を紹介したい。特に、後者においては間接型
強誘電体特有のユニークな相転移物性を活かして、PZTを超える焦電発電性能が見積もられている。
講演では、この成果と関連してマルチフェロイック物質に代表される間接型強誘電体の
微小エネルギーによる環境発電への応用可能性を議論する予定である。
第三十六回: 2018年 2月24日(土) 10:00-11:00
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス教育研究7号棟1Fセミナー室
【講演者】 Conrado Rillo (ザラゴザ大学・教授)
【タイトル】 Is liquid helium an absolutely “pure liquid”? -The purity of liquid
helium revisited-
【概要】 液体ヘリウムの純化は、例えば超冷中性子生成の効率などといった重要性から、
1970年代にはすでに多大な興味の対象であった。 この10年で、液体ヘリウム中の
不純物にも起因する ヘリウム蒸発クライオスタットや希釈冷凍機(T < 4.2 K) での
フローインピーダンスブロック、 といった世界規模の問題はさらに頻発するようになってきた。
その問題はヘリウムの途方もないロスや低温研究における遅れを世界中で引き起こしている。
我々はそれらを解決する、 ヘリウムの”Advanced Technology” for Purification (ATP) and
Liquefaction (ATL)に立脚した 小規模な機構を提案した。 本講演では、液体ヘリウムの純度と
ヘリウムの応用に関する簡単な導入の後、 ATPおよびATLの基礎的な技術を詳しく説明し[1]、
最後にフローインピーダンスブロックを完全に解決した、 “Clean Helium Recovery Plant” [2]
について紹介する。
The purity of liquid helium was already a subject of much interest in the 1970’s due to its importance,
for example, in the efficiency of the production of ultra cold neutrons. In the last decades a recurrent
worldwide issue, the flow impedance blocking in helium evaporation cryostats and dilution refrigerators
(T < 4.2 K), also ascribed to the presence of impurities in liquid helium, has become more and more frequent.
The problem is causing tremendous helium losses and delays in research at low temperatures, all over the world.
We have proposed a plausible mechanism to explain the issue and have implemented a proven solution,
based on the “Advanced Technology” for Purification (ATP) and Liquefaction (ATL) of helium at the small scale.
In this talk, after a brief introduction of the subject of liquid helium purity, and, of the applications of helium,
the fundamentals of the ATP and ATL technologies are given in detail [1]. Finally, the concept of
“Clean Helium Recovery Plant” [2], that completely solves the flow impedance blocking issue, is presented.
[1] Enhancement of the Liquefaction Rate in Small-Scale Helium Liquefiers
Working Near and Above the Critical Point, C. Rillo et al. Phys. Rev. Applied
3, 051001 – Letter – Published
8 May 2015.
[2] Hydrogen-Free Liquid-Helium Recovery Plants: The Solution for
Low-Temperature Flow Impedance Blocking, M. Gabal et al. Phys. Rev. Applied 6,
024017 – Research Article –
Published 26 August 2016.
第三十五回: 2017年 12月21日(木) 16:30-18:00
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室 &
飯塚キャンパス (飯塚)TV会議室 (TV会議システムを使って行います)
【タイトル】キラル磁性体におけるトポロジカルスピン秩序に関する研究
【講演者】 美藤正樹 (基礎科学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-1/entry-540.html
【概要】 トポロジカルなオブジェクトとして、壁(wall)、ねじれ(kink)そして渦(vortex)が挙げられる。
それがスピン系で見せる振舞いはスピンデバイスへの期待を抱かせる。最近、キラルな磁気構造に
外部磁場を印加した環境下で、上記のトポロジカルなオブジェクトが格子を形成することが発見された。
カイラルソリトン格子(CSL)やスキルミオン格子がその具体的な例である。カイラルソリトン格子(CSL)の場合、
周期的に並んだkink(ソリトン方程式に従うため、業界ではソリトンと読んでいる)が磁場変化に対して
出入りする。この分野は理論主導で研究が進展していた分野であるが、最近では、ソリトンの出入りが、
結晶サイズや結晶外形そして結晶の微細加工構造に依存し、まさにトポロジカルなスピン秩序であることを
実験的に裏付ける結果が続々と得られている。セミナーでは、数ミリメートルレベルから数マイクロメートル
サイズに渡る多彩な結晶に対する最新の磁気測定の結果をお見せし、トポロジカルなスピン秩序ならではの
振舞いを紹介する。
第三十四回: 2017年 11月20日(月) 16:20-17:50
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室 &
飯塚キャンパス (飯塚)TV会議室 (TV会議システムを使って行います)
【タイトル】 特殊反応場を利用した機能性材料開発の実際
(Practical Examples for Development of Functional Materials using Unique Reaction Fields)
【講演者】 田中将嗣 (基礎科学研究系・助教) http://www.ccr.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-3/entry-2826.html
【概要】 機能性材料の開発においては、新規化合物の合成・加工・評価というサイクルが
必要となる。加工には測定用試料の微細加工や評価に必要なガラスの加工、合成に必要な
反応容器の機械加工などを含む。それゆえこれらのサイクルは相互に強く関連し、また、
できる限り迅速に回すことが鍵となる。本講演では高圧力・高温環境のような特殊な反応場を
利用する合成法により得られた物質や、その物性に関する知見について、現場での
実際の様子を交えた講演者の最近の取り組みを紹介する。
第三十三回: 2017年 9月12日(火) 14:40-16:10
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室 &
飯塚キャンパス (飯塚)TV会議室 (TV会議システムを使って行います)
【タイトル】 ディラック半金属と熱電変換材料
【講演者】 岡本佳比古氏 (名古屋大学大学院工学研究科応用物理学専攻・准教授)
【概要】 冷媒ガスを用いた気体圧縮方式にとって代わる次世代の冷凍技術として,
伝導電子の熱輸送を利用した冷却:熱電冷却にかかる期待は大きい。現在, Bi2Te3系の
材料を使用したペルチエ素子として室温付近における限られた用途で実用化されているが,
より低温で実用できれば, 用途が大きく広がると期待される。低温で高い性能を示す材料を
得るためには, 極めて小さいバンドギャップをもつ物質において新材料開発を行う必要がある。
一方, バンドギャップの大きさがちょうどゼロになった状態が安定に存在するゼロギャップ半導体が,
近年ディラック・ワイル半金属の観点から大きく注目され, 世界的に物質探索が進んでいる。
この状況は, 特異な電子物性の発現だけでなく, 熱電変換材料の開発にとってもブレイクスルーが
起こりうるチャンスと考える。セミナーでは, このような発想に基づき, 我々のグループで開拓してきた
熱電変換材料とディラック半金属に関する最近の成果について報告したい。
第三十二回: 2017年8月23日(水) 16:20-17:50
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室 &
飯塚キャンパス (飯塚)TV会議室 (TV会議システムを使って行います)
【タイトル】 環境調和型熱電硫化物の構造・電子・フォノン物性
【講演者】 末國晃一郎氏 (九州大学大学院総合理工学研究院・准教授)
【概要】 未利用熱エネルギーを電力に変換する「熱電発電」の広範な応用には,
環境低負荷で高性能な熱電物質が必要である。その候補物質として人工硫化銅鉱物の
テトラヘドライトCu12Sb4S13が注目を集めている。この物質は縮退半導体的な電子状態による
比較的大きなゼーベック係数とCu原子の非調和大振幅振動(ラットリング)による
低熱伝導率のために高い熱電変換性能を示す。このラットリングは低温における構造相転移の
原因と考えられ,固体物性の観点からも興味深い研究対象である。講演では,テトラヘドライトの
構造・電子・フォノン物性を紹介すると共に,人工硫化銅鉱物(コルーサイトなど)や
チタン−硫黄系物質の熱電研究の動向を概説したい。
第三十一回: 2017年8月9日(水) 14:40-16:10
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室 &
飯塚キャンパス (飯塚)TV会議室 (TV会議システムを使って行います)
【タイトル】 介護物理学
【講演者】 吉岡由宇氏 (社会福祉法人福智会)
【概要】 講演者は物性物理の分野で学位を取得し, 大阪大学にてポスドクとして
アカデミックな世界に生きていた。しかし, 縁あって田川郡の特別養護老人ホームという地域も
分野も全く異なる世界に勤めることとなった。セミナーの前半はストロンチウム酸化物超伝導体を
中心とした物理に関する内容で, 後半は田舎の老人ホームにおける課題と, 講演者が
取り組んできた解決方法について紹介する。
第三十回: 2017年3月13日(月) 14:40-16:10
【ポスター】
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス・コラボ教育支援棟3階セミナー室
飯塚キャンパス飯塚AV講演室 (TV会議システムを使って中継を行います)
【タイトル】
計算科学とインフォマティクス手法を用いた材料開発への期待 (Challenge to Material Development Using Computational Science and
Informatics)
【講演者】
常行真司氏 (東京大学大学院理学系研究科物理学専攻・教授, http://white.phys.s.u-tokyo.ac.jp/index2.html
JSTさきがけ「理論・実験・計算科学とデータ科学が連携・融合した先進的マテリアルズインフォマティクスのための基盤技術の構築」研究総括
https://www.jst.go.jp/kisoken/presto/research_area/ongoing/bunyah27-4.html
【講演内容】
物質科学はいま情報科学と融合して新しい学術分野をつくりだそうとしています。
これまで合成されていなかった新物質や新しい機能をもった材料を経験に頼らず,
非経験的に予言する時代が来ています。このたび, この分野の世界的牽引者の
ひとりであられる東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授で現在
JSTさきがけ研究総括を務めておられる常行真司先生をお招きして, この分野の
前線の話題と今後の展望について講演して頂きます。
第二十九回: 2017年3月3日(金) 15:00-17:00
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室 &
飯塚キャンパス (飯塚)TV会議室 (TV会議システムを使って行います)
【講演内容】
15:00-15:40
【タイトル】 強相関効果による高温超伝導発現機構
【講演者】 三澤貴宏 (東大物性研・主任研究員)http://pcoms.issp.u-tokyo.ac.jp/cultivation/youngresearchersmisawateam/members/misawa
【概要】 近年の強相関電子系に対する数値計算手法の進展と, それを用いた強相関電子系における
高温超伝導機構に対する我々の最近の研究結果について紹介する。特に, 銅酸化物高温超伝導体を
記述する最も基本的な模型であるハバード模型および鉄系超伝導体に対する第一原理有効模型の
解析を行ったところ, いずれの場合にも相分離領域近傍で増大する一様な電荷感受率の増大が
高温超伝導発現と密接に関連していることを示した結果について発表する。さらに, この超伝導発現機構を
反映して, 高温超伝導体の界面では積層方向の自由度を使うことで, 超伝導が自発的に最適される機構が
存在することを明らかにした結果についても発表する [1]。この結果は, 最近の銅酸化物界面で実験的に
報告されている超伝導転移温度がドーピング濃度によらず固体の場合の最適値に保たれる振る舞いを
よく説明するものとなっている。
[1] Takahiro Misawa et al., Sci. Adv. 2, e1600664 (2016).
http://advances.sciencemag.org/content/2/7/e1600664
15:40-16:20
【タイトル】YNi2B2Cにおける異方的超伝導ギャップの第一原理計算
【講演者】 河村光晶 (東大物性研・研究員) http://pcoms.issp.u-tokyo.ac.jp/cultivation/youngresearchersyoshimiteam/members/kawamura
【概要】 YNi2B2C はフォノン媒介型超伝導体であるにもかかわらず異方的な超伝導ギャップを
生じるという風変わりな特性を持つ. また, ホウ素原子の同位体効果が観測されていることから,
軽元素由来のフォノンによって誘起される超伝導体としても興味深い。本研究では, 超伝導密度
汎関数理論に基づく第一原理計算を行い, この異方的超伝導の起源を調べた[1]。本研究での
Fermi
面上のギャップ関数, および軌道成分の解析により, この物質の超伝導の異方性が主に
Ni3d
軌道混成の大幅な波数依存性に起因することが明らかにされた。
[1]
M. Kawamura, R. Akashi, S. Tsuneyuki, PRB 95, 054506 (2017).
http://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevB.95.054506
16:20-17:00
【タイトル】 YBa2Cu3O7-dナノコンポジット薄膜の界面構造と磁束ピンニング特性
【講演者】 堀出朋哉 (物質工学研究系・助教) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t4/t4-3/entry-2715.html
【概要】 YBa2Cu3O7-d (YBCO) は臨界温度 (Tc) が高いだけでなく, 高温超伝導体の中でも臨界電流
密度 (Jc) が高いため超伝導線材への応用が期待されている。2軸配向したバッファー層を有する金属
テープ上にYBCO膜を成膜することにより粒界弱結合の影響を抑制し, 高いJc を有する被覆超伝導体
(Coated
Conductor) が作製されている。YBCO薄膜のJc をさらに向上させるためにピンニングセンターを
導入する試みが行われてきた。非超伝導体であるBaZrO3, BaSnO3, BaHfO3, Ba2NbYO6, Y2O3 などを
ナノ介在物 (サイズ = 5-20 nm) として高密度 (間隔 = 50-10nm) に導入することにより、量子化磁束を強く
ピンニングすることができる。特にBaMO3 (M=Zr, Sn, Hf) を導入することにより作製されるナノロッドは高い
ピンニング特性を有している。ナノロッドによる磁束ピンニングにおいて, YBCOとBaMO3の界面, ナノロッドの
サイズ, ナノロッドの間隔, ナノロッドの長さ等複数の構造パラメータがピンニング特性を支配している。
今回は, 特に界面やひずみに着目し, ナノロッド界面の構造解析結果を示し, その磁束ピンニング特性への
影響について議論する。
第二十八回: 2016年12月22日(木) 16:20-17:50
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室 &
九州工業大学飯塚キャンパスTV会議室 (TV会議システムを使って行います)
【講演者】 小田勝 (基礎科学研究系・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-2/entry-2710.html
【タイトル】 半導体量子ドットの励起子光物性と応用への展開 (Understanding of exciton physics in the semiconductor quantum dots and the useful applications)
【概要】 寸法が数ナノメートル程度の半導体結晶である量子ドットは,
その寸法・形状・構造の違いに応じて,バルク結晶とは大きく異なる電子物性を示す.
本講演では,その中でも特に,新たな動作原理に基づく光電変換素子の開発に向け,
その利用が期待されている,量子ドット系に特有に見られる電子・光物性現象を紹介し,
その原理や課題を解説する。さらに,それらの現象の新規な利用法を探る,
講演者による最近の取り組みを紹介する.
第二十七回: 2016年12月2日(金) 15:00-16:30
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス本部棟本部棟3F1会議室 &
九州工業大学飯塚キャンパス第2会議室 (TV会議システムを使って行います)
【講演者】 古賀幹人 (静岡大学大学院教育学研究科学校教育研究専攻・教授)
【タイトル】 ナノ近藤系におけるスピン電荷制御 (Spin and charge control for the nano Kondo system)
【概要】 量子ドットをはじめとする人工原子系を中心に, 最近の微細構造形成技術の進歩は
めざましいものがあり, 近藤効果研究の新たな舞台となっている。本講演では, 三角形三重
量子ドット系の近藤効果に起因する誘起電気分極とその外場による制御の可能性について,
最近の理論的研究の一端を紹介する。
第二十六回: 2016年10月4日(火) 16:20-17:50
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室 & 飯塚キャンパス研究管理棟2F TV会議室
(TV会議システムを使って行います)
【講演者】 松平和之 (電気電子工学研究系・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t3/t3-2/entry-548.html
【タイトル】 強くスピン軌道相互作用した強相関5d電子系イリジウム酸化物の電子物性
【概要】 5d遷移金属酸化物はスピン軌道相互作用と電子相関効果の競合・協奏による
多彩な電子物性が期待され,近年,活発な研究が展開されている。本セミナーでは,
第21回(2016年)日本物理学会論文賞となった論文「Metal–Insulator Transitions in
Pyrochlore Oxides Ln2Ir2O7」(J. Phys. Soc. Jpn. 80, 094701 (2011))を基にパイロクロア型
Ir酸化物Ln2Ir2O7の金属絶縁体転移について紹介する。また最近研究を進めている
幾何学的フラストレート系Ca5Ir3O12の研究の現状についても紹介する。
The 26th: Tuesday,
October
4, 2016 from 16:20 to
17:50
【Place】Headquarters ridge 1F TV
meeting room
(Tobata) &
Research management ridge 2F TV meeting room
【Speaker】Kazuyuki MATSUHIRA http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t3/t3-2/entry-548.html
【Title】 Electronic properties of iridates with significant electron correlation and
strong spin-orbit coupling
【Abstract】 Recently, 5d transition metal oxides have been actively investigated
as an emergence of various electronic properties are expected by the competitive
or concerted effect of electron correlation and spin-orbit interaction. In this seminar,
firstly, I will give an overview of metal insulator transition of pyrochlore iridates
Ln2Ir2O7 on the basis of the paper "Metal–Insulator Transitions in Pyrochlore
Oxides Ln2Ir2O7: J. Phys. Soc. Jpn. 80, 094701 (2011)" which is received 21st
Outstanding Paper Award of the Physical Society of Japan. In addition,
I will talk about recent result of geometrically frustrated iridate Ca5Ir3O12.
第二十五回: 2016年8月3日(水) 16:20-17:50
【場所】
九州工業大学戸畑キャンパス本部棟1F TV会議室 & 飯塚キャンパス研究管理棟2F TV会議室
(TV会議システムを使って行います)
【講演者】中村和磨 (基礎科学研究系・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-2/entry-2708.html
【タイトル】 超伝導転移温度の第一原理計算
【概要】 超伝導転移温度の第一原理計算手法と実証研究について報告する。
近年は 200 Kオーダーのフォノン系超伝導体(高圧硫化水素化物)が発見され
高温超伝導研究・新規物質探索に多くの関心が集まっている。超伝導転移温度の
第一原理計算理論・バンドおよびフォノン分散曲線・電子格子相互作用および
電子間相互作用の計算詳細・具体的物質への適用結果について報告する。
第二十四回: 2016年6月24日(金) 16:20-17:50
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】 渡辺真仁 (基礎科学研究系・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-2/entry-1142.html
【タイトル】 準結晶Yb15Al34Au51の圧力に対してrobustな量子臨界現象
【概要】 物質に圧力や磁場をかけて磁気秩序などの秩序相への2次相転移の
温度を絶対零度まで抑制した点を量子臨界点とよぶ。量子臨界点近傍では
電気抵抗や比熱などの物理量が通常金属とは異なる振る舞いを示す
量子臨界現象が現われることが知られている。量子臨界点近傍で増大する
臨界ゆらぎは超伝導などの他の秩序相を誘起し得ることから,
より高い超伝導転移温度の実現の可能性の観点からも注目を集めている。
近年, Yb系金属化合物において, これまでよく理解されてきた
磁気量子臨界現象に従わない, 非従来型の量子臨界現象が複数発見され,
強相関電子系の分野で大きな問題となっている。最近, Yb系準結晶
Yb15Al34Au51が上記と共通の非従来型の量子臨界現象を発現することが
発見された。驚くべきことに, この物質は常圧・ゼロ磁場で量子臨界性を
発現しており, さらに驚くべきことに, 圧力を1.5GPaかけても臨界性が
保たれることが観測された。講演では, 量子臨界現象のこれまでの研究の
発展を概観し, 非従来型の量子臨界現象を統一的に説明する機構として,
Ybの臨界価数ゆらぎの理論を紹介し, 準結晶における圧力に対して
robustな臨界性の出現機構を議論する。
第二十三回 (特別セミナー): 2016年2月27日(土) 10:00-11:30
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス総合教育棟2階C-2F講義室
【講演者】 大貫惇睦(琉球大学 理学部 客員教授)
【タイトル】Eu化合物の特異な電子状態と結晶反転対称性の破れた化合物のフェルミ面の性質
【概要】現在(1)Eu化合物の特異な電子状態,(2)結晶反転対称性の破れた
化合物のフェルミ面の性質, 及び(3)Co化合物の磁性とフェルミ面の性質について
研究している。本講演では,(1)と(2)について講演する。(1)の
Eu化合物は, 大部分がEuは2価でGdと同じ磁性体であるが, 3価の化合物,
EuPd3等も存在する。また, 近藤効果に基づく重い電子状態のEu化合物,
EuNi2P2等 も存在する。これらの電子状態を概説する。
次に(2)の結晶反転対称性の破れた結晶には, ラッシュバ型とカイラル構造が
典型である。まず, ラッシュバ型のCeIrSi3の特異な超伝導について述べる。
次に, カイラル構造のTaSi2, NbSi2, PdBiSeのフェルミ面の分裂について,
特に, Biの相対論効果(スピン・軌道相互作用と質量補正)について議論する。
私の大好きな純良単結晶育成の話をまじえながら, 議論したい。
第二十二回: 2016年2月1日(月) 16:20-17:50+α
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】 石丸学 (物質工学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t4/t4-1/entry-2458.html
【タイトル】 電子線動径分布解析法による照射誘起化学的不規則性の解析
【概要】 アモルファス材料やナノ結晶材料の構造を解析する手法の1つとして、
動径分布解析法がある。動径分布関数はX線や中性子線等の回折手法によって
求めること が出来る。一方、電子回折法により動径分布解析を行っているグループは、
世界的に見ても限定される。これは、電子と物質の強い相互作用による回折強度の
定量性の劣化、電子顕微鏡に用いられている記録媒体の限界等に起因する。
我々のグループでは先端的電子顕微鏡技術を用いてこれらの問題を克服し、
様々なアモ ルファス・ナノ結晶材料の構造解析を行っている。本セミナーでは、
照射環境下におけるSiCおよびGaNの構造変化を電子線動径分布解析法により
調べた例 を報告する。
第二十一回: 2015年12月22日(火) 16:20-17:50+α
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】 片宗 優貴 (若手研究者フロンティア研究アカデミー,特任助教)
【タイトル】 ナノダイヤモンド膜の創製とその受光素子応用に向けた研究
【概要】 カーボン材料では炭素原子の持つ結合形態の多様性より,フラーレンや
ナノチューブのような,ナノカーボンに分類される多くの同素体が存在する.
1990年代始めに発見された粒径10 nm以下のナノダイヤモンドは,超ナノ微結晶
ダイヤモンド(UNCD)と称され,その物性は,結晶ダイヤモンドやアモルファス
カーボン(a-C)とも異なり,微結晶を取り巻く粒界に大きく依存したものになる.
UNCD膜では,膜中に無数に存在する微結晶により膜中での粒界が占める割合が
大きく,それに起因した特異な光・電子物性が発現すると考えられている.中でも
光子エネルギー3-6 eVの光に対する10^5 /cmを超える大きな吸収係数に
着目すると,光吸収により生成されるフォトキャリアの取り出しが可能になれば,
薄膜の光電変換素子材料として期待できる.本セミナーでは,物理気相合成法
によるUNCD膜の合成とその基礎的な物性評価,また受光素子応用に向けた
半導体制御に関する研究の取り組みについて紹介する.
第二十回: 2015年11月30日(月) 16:20-17:50+α
【場所】九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】 福間康裕 (若手研究者フロンティア研究アカデミー・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/iizuka/i-12/i12-2/entry-1140.html
【タイトル】 スピン流の生成および検出
【概要】スピントロニクス技術の進展と共に、巨大磁気抵抗効果やトンネル磁気抵抗効果で
利用されているスピン編極電流から角運動量の流れであるスピン流を利用して新しい
素子機能性の創出が期待されています。本セミナーでは、非局所スピン注入、
スピンポンピング、スピンホール効果を用いたスピン流の生成や検出手法を
紹介すると共に、その応用の可能性について議論します。
第十九回: 2015年10月14日(水) 16:20-17:50
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】 宮崎康次 (機械知能工学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t1/t1-1/entry-478.html
【タイトル】 ナノ構造における熱伝導
【概要】 1980年頃から,集積回路の小型化が進み、その高性能化と
冷却技術の確立が直結するようになった.本来,熱伝導方程式で
予測できるはずの温度が実験で測定されず,集積回路の熱問題が
深刻化したため,90年代以降,熱伝導現象が深く考察されるようになった.
古くから格子振動(フォノン)が熱エネルギーを輸送することは
よく知られているが,実験結果から,近年,フォノンの平均自由行程が
非常に長いことが指摘されるようになっている.実用的にはみかけの
熱伝導率が使われるようになってきたが,関連する研究室の取り組みと
研究動向について紹介する.
第十八回: 2015年9月4日(金) 14:40-16:10
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第二会議室
【講演者】 出口博之 (基礎科学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-1/entry-530.html
【タイトル】 二次元量子反強磁性体La_2_CuO_4_のナノ粒子における特異な磁気サイズ効果
【概要】 最近,二次元量子スピンハイゼンベルグ型反強磁性体において,有限な二次元面の端(エッジ)
付近のスピンの磁性が理論的に研究され,エッジの磁性は磁気相互作用の端での結合状態および
二次元面のサイズに大きく依存し,条件によっては絶対零度において磁化率が負に発散するという
特異なサイズ効果がシミュレーションで予想された.銅酸化物超伝導体の母物質として知られている
La_2_CuO_4_は二次元量子スピンハイゼンベルグ型反強磁性体の典型物質でもある.そこで,
この磁性体を研究対象としてメソポーラスシリカSBA-15の細孔中でLa_2_CuO_4_ナノ粒子を合成した.
その磁性のエッジ効果を調べるためにSQUID磁束計による磁化過程および直流磁化率測定と
電子スピン共鳴(ESR)測定を行い,ナノ粒子の磁性を解析した.バルクにおいてはCu^2+^は
S = 1/2,g ≈2の磁気モーメントを有するが,ナノ粒子では,新たにS = 1/2,g ≈5の磁気モーメントが
両測定より確認された.このナノ粒子の示した異常に大きなg値はエッジ効果に起因するのではないかと
推測される.
第十七回: 2015年7月8日(水) 16:30-18:00
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第二会議室
【講演者】 堀部陽一 (物質工学研究系・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t4/t4-2/entry-2707.html
【タイトル】 強相関スピネル化合物AlV2O4における電荷秩序構造 −電子回折法およびX線回折法を併用した低対称構造の精密構造解析−
【概要】 強相関遷移金属酸化物の一種であるバナジウムスピネル化合物AlV2O4は、
約700Kにおいて、磁化率の変化を伴う金属―半導体相転移を示す。この相転移の
起源については、X線回折法を用いた精密構造解析の結果から、V+2-dイオンが
スピネル構造中のカゴメ格子層を、V+2-3dイオンが六角格子層を占める
V+2-d : V+2-3d =3:1型の電荷秩序モデルが提案されてきた。しかしながら
この構造モデルは、他の研究により見出された二倍周期の超構造の存在と
矛盾しており、その詳細については不明な点が多かった。本セミナーでは、
電子回折法とシンクロトロン放射光回折法を併用したAlV2O4における
電荷秩序構造の精密構造解析について概説することにより、透過型電子顕微鏡を
用いた物性研究について紹介する。その後、電子回折法―X線回折法による
精密構造解析の他の具体例等についても取り上げたい。
第十六回: 2015年5月29日(金) 14:40-16:10
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】 飯久保智 (生命体工学研究科生体機能応用工学専攻・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/wakamatsu/w1/w1-3/entry-747.html
【タイトル】 マグネシウム合金の熱力学的性質: 第一原理計算を援用した熱力学計算について
【概要】 希土類元素(RE)と遷移金属元素(TM)を含有するMg合金において
観測される長周期積層(LPSO)構造では,hcp-Mgの周期的積層欠陥に
REと TMが偏析して規則化する,構造と組成に関する変調が同時に
起こることが特徴である.このhcp-Mgにおける熱力学的性質を正しく
理解すること は,LPSOという新規な材料組織の形成要因を明らかにする上で
重要である.これまでにMg合金のhcp固溶体の熱力学的性質を CALPHAD法,
第一原理計算,クラスター展開法(CEM)およびクラスター変分法(CVM)を
用いて調べてきた。その結果,凝固時にLPSO構造が形 成される
Mg-Y-Zn系(typeT)では広い組成•温度範囲にわたってhcpの2相分離が
存在し,この挙動にともなうスピノーダル分解がLPSO構造 の形成メカニズムに
関係していることなどがわかってきた.これらの手法の説明と、結果について
概説したい。
第十五回: 2015年4月17日(金) 14:40-16:40
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】 松本要 (物質工学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t4/t4-1/entry-474.html
【タイトル】 量子化磁束のピン止め技術と高温超伝導への応用
【概要】 銅酸化物高温超伝導体の発見以来28年が経過しその応用技術は大きく進んだ。
本セミナーでは特に超伝導線材化技術と量子化磁束のピン止め技術に焦点をあて、
銅酸化物高温超伝導体開発の最近の動向について紹介する。最初に、銅酸化物
高温超伝導体の線材化における材料科学的進展と量子磁束のピン止めの原理について
述べる。その後、現在の研究開発状況と他の材料系の現状についても触れる。
最後に、磁束ピン止めに関わる最新技術と将来展望について考えたい。
第十四回: 2015年2月2日(月) 16:30-18:30
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】 美藤正樹 (基礎科学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-1/entry-540.html
【タイトル】 ジアロシンスキー・守屋相互作用ベクトルを有する結晶の巨大非線形磁気応答
【概要】 交流磁化率測定は、マクロススコピックな測定方法であり、決して特殊な測定ではない。
しかし、交流磁場に対する磁気応答に多彩な情報が含まれていることを知らない研究者も多い。
今回、ジアロシンスキー・守屋相互作用ベクトルを有する結晶群が、交流磁場に対して
巨大な非線形磁気応答を発現することを紹介する。その物理現象は、上記結晶群での
磁気ドメインが強いイジング異方性を有し、それらが双極子相互作用を介し、グラス的に
振る舞っているとして解釈できる。この研究の紹介を通じ、交流磁化率が内包する物理情報を
解説する。
第十三回: 2014年12月10日(水) 16:30-18:30
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第二会議室
【講演者】 小田勝 (基礎科学研究系・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-2/entry-2710.html
【タイトル】 半導体ナノ結晶における励起電子緩和過程
【概要】 数ナノメートルスケールの半導体結晶(ナノ結晶)では,電子系に対する
量子閉じ込め効果により,この寸法領域に固有の電子状態が形成される。
今回の講演では,この電子状態の特徴と起源について解説するとともに,
特にこのような電子状態間で生じる遷移過程について,最近の研究の話題も
交えて紹介する。
第一回九工大物性ワークショップ: 2014年11月21日(金)-22日(土)
強くスピン軌道相互作用した強相関電子系における新奇量子相と量子現象
Novel
quantum phases and phenomena in correlated electron systems with strong
spin-orbit coupling
【ポスター】 2014kyutechWS.pdf
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス・コラボ教育支援棟3階セミナー室
【講演内容】
2014年11月21日(金) 15:00-18:30
「パイロクロアIr 酸化物におけるキャリアドープ効果」 松平和之 (九工大工・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t3/t3-2/entry-548.html
「パイロクロア酸化物Cd2Os2O7 における磁気ドメイン界面伝導」 廣瀬峻啓 (東大物性研・DC1) http://hiroi.issp.u-tokyo.ac.jp/saito/Members.html#4
「パイロクロア伝導系のトポロジカル欠陥」 宇田川将文
(東大工・助教) http://www.motome-lab.t.u-tokyo.ac.jp/udagawa/saito/Welcome.html
「スピン軌道相互作⽤に起因した特異な磁性と伝導現象」 求幸年 (東大工・准教授) http://www.motome-lab.t.u-tokyo.ac.jp/index.html
「ブリージングパイロクロア格⼦反強磁性体の低温磁性」 岡本佳比古 (名大工・准教授) http://yoshihikookamoto.web.fc2.com/
「遷移金属酸化物の素励起とそれの電子構造への影響: 第一原理GW計算によるプラズマロン状態の微視的解析」 中村和磨 (九工大工・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-2/entry-2708.html
2014年11月22日(土) 9:00-11:45
「VO2 の⾦属絶縁体転移を斜めから眺めると」 廣井善二 (東大物性研・教授) http://hiroi.issp.u-tokyo.ac.jp/saito/Hiroi_Lab.html
「3d, 5d 遷移⾦属酸化物における磁気秩序と構造物性研究」 山浦淳一 (東工大元素セ・特任准教授) http://www.mces.titech.ac.jp/author/yamaura/
「放射光X 線を⽤いた精密構造解析と電⼦密度解析」
真木祥千子 (東工大元素セ・プロジェクト研究員)
「酸素分⼦の分⼦間相互作⽤と磁場誘起構造相転移」 小林達生 (岡山大理・教授) http://www.physics.okayama-u.ac.jp/kobayashi_homepage/index.html
「強相関電⼦系の新しい量⼦臨界現象」 渡辺真仁 (九工大工・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-2/entry-1142.html
第十二回: 2014年10月22日(水) 17:30-19:30
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】 松平和之 (電気電子工学研究系・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t3/t3-2/entry-548.html
【タイトル】 スピンアイスにおけるスピンダイナミクス (Spin
Dynamics in Spin Ice)
【概要】 1997年にスピンアイスという巨視的に縮退した基底状態を持った磁性体が発見された。
スピンアイスという名前は,氷のプロトンの配置の自由度の問題と等価であることから名付けられている。
以降,その特異な性質,磁場誘起の新奇な巨視的縮退(カゴメアイス),磁場誘起の液相-気相相転移,
磁気モノポール,量子スピンアイスなどが見いだされ,現在も盛んに研究が進められている。
講演では,磁化測定によるスピンアイスのスピンダイナミクスの研究について紹介する。
第十一回: 2014年8月6日(水) 17:00-19:00
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】中村和磨 (基礎科学研究系・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-2/entry-2708.html
【タイトル】 第一原理からの物質の低エネルギー有効模型構築
【概要】
物質の低エネルギー有効模型の第一原理導出を目的として、これまで開発
してきた「制限多体摂動論」について紹介する。これまで現象論的・経験的に
なされてきた有効模型導出を完全に第一原理計算に基づかせ、
有効模型のパラメータを、単なるパラメータとしてではなく、現実物質を
特徴づける微視的因子として捉えることで物質の個性を分析する。アルカリ
金属充填ゼオライト系への応用を通して、本手法の定量的信頼性を示す。
第十回: 2014年6月18日(水) 17:00-19:00
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】 渡辺真仁 (基礎科学研究系・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-2/entry-1142.html
【タイトル】 価数ゆらぎのもたらす新しい量子現象
【概要】 Ce系化合物やYb系化合物で、CeやYbの価数転移の
量子臨界ゆらぎが様々な物性異常を発現していることが、
これまでの理論および実験研究により明らかになってきた。
講演では、価数転移と量子臨界現象に関するこれまでの
研究を概観し、最近の話題についても紹介する。
第九回: 2014年5月21日(水) 17:00-19:00
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】 堀部陽一 (物質工学研究系・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t4/t4-2/entry-2707.html
【タイトル】 マルチフェロイック六方晶酸化物RMnO3におけるボルテックス分域構造 −透過型電子顕微鏡を用いた物性研究−
【概要】
六方晶マンガン酸化物RMnO3 (R=Ho-Lu, およびY)は、MnO5六面体傾斜を主秩序変数・
自発分極を従秩序変数とする間接型強誘電体であり、また低温度域で反強磁性を示す
マルチフェロイック物質である。本系におけるMnO5六面体傾斜、強誘電性、および
反強磁性の相関について調べるため、各々の性質に関係した分域構造の研究がなされている。
例えば、第二高調波を用いた研究から、強誘電分域境界及び反強磁性分域境界の
密接な相関が指摘されている。一方、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた研究から
MnO5六面体傾斜に関係した構造分域(反位相分域)の存在が指摘されてはいたものの
その詳細についてはこれまで明らかではなかった。本セミナーでは、TEMによる
物性研究について簡単に紹介した後、六方晶マンガン酸化物においてTEMによる
分域構造観察から見出された、構造分域及び強誘電分域の興味深い相関について紹介する。
第八回: 2014年4月7日(月) 16:30-18:30
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】 出口博之 (基礎科学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-1/entry-530.html
【タイトル】 スピングラスのカイラリティ仮説と超伝導セラミクスのグラス転移
【概要】
希薄磁性合金のように磁性イオンがランダムに配置している場合、
低温でスピンがランダムな向きで凍結しているような秩序相が存在し、
スピングラス相と呼ばれている。スピングラス転移については、理論、
シミュレーションおよび実験において長年研究されてきたが、実験と
理論での不一致な点があり問題となっている。川村は、カイラリティと
呼ばれる自由度がスピングラス転移において本質的な役割を担って
いるというカイラリティ仮説を提唱した。この仮説によれば、等方的な
相互作用をもつスピングラスは、スピンとカイラリティが分離して別々に
秩序化するが、異方性があると同時に秩序化する。現実のスピングラス
物質では多少なりとも異方性があり、スピングラス転移はカイラルグラス
転移の性質を持つことになり、今までの理論と実験の矛盾点を解消
できる。このカイラル仮説を実験的に検証するには、等方的な極限
での現実物質におけるスピンとカイラリティ分離が観察できれば一番よい。
d波超伝導体のセラミクスは0とπの位相差を持つジョセフソン接合系の
ネットワークとみなされ、ハミルトニアンが等方的(XY)なスピングラスに
対応する。そこで、実験的にカイラリティ仮説を検証するために、
超伝導セラミクスのグラス転移についての研究を行っているので、
その内容を紹介する。
第七回: 2014年2月17日(月) 17:00-19:00
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス総合研究6号棟マテリアル会議室
【講演者】 堀出朋哉 (物質工学研究系・助教) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t4/t4-3/entry-2715.html
【タイトル】 ナノ構造による量子化磁束挙動の制御 −超伝導線材の高性能化を目指して−
【概要】
材料において特性を制御しデバイス等に応用していくには
ナノスケールの構造制御を行う必要がある。
ナノ構造制御においてはトップダウン法とボトムアップ法があり、
これらを駆使することで様々な構造を作製することが可能になる。
本発表では、発表者が過去に行ってきたナノ構造作製手法
(磁気ヘッドの微細加工、超伝導薄膜作製)について簡単に
紹介した後、現在もっとも重点的に進めているナノコンポジット
超伝導薄膜の構造制御について詳細に説明する。
送電ロス低減、MRI、SMESなどの超伝導応用に向け開発が
進められている高温超伝導線材では臨界電流密度を
向上させる必要がある。高温超伝導体内に侵入する量子化
磁束の挙動を制御し臨界電流密度を向上させるためには
ナノスケールの非超伝導相を超伝導体内に導入することが
有効である。現在もっとも高い性能が期待されている
YBa2Cu3O7ではサイズ5-10nmのナノ介在物(BaSnO3
ナノロッドやY2O3ナノ粒子)を薄膜成長時に導入すること
により高い臨界電流密度を実現することができる。
さらなる磁束挙動制御を目的として、現在ナノ介在物の
分布と界面に着目している。これらを制御した構造において
作製プロセス・ナノ組織・臨界電流密度特性を議論する。
第六回: 2014年1月27日(月) 16:30-18:30
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス百周年中村記念館特別会議室
【講演者】 飯久保智 (生命体工学研究科生体機能応用工学専攻・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/wakamatsu/w1/w1-3/entry-747.html
【タイトル】 Mn3(Cu1-xGex)Nの磁気体積効果 (Magneto-Volume Effect of Mn3(Cu1-xGex)N)
【概要】
温度を上げると大抵の物質は体積が膨張するが、磁気的な
要因により縮む物質も存在することが知られている。
本セミナーでは、2005年に理研の竹中らによって報告された
負熱膨張物質である逆ペロフスカイト型化合物をとりあげる。
その起源として注目された微視的なスピン、または
局所構造の変化を、中性子回折によって調べた研究を紹介する。
While a volume of the materials are usually increased with
increasing temperature, there are several materials show
a contraction due to their magnetism. In this talk, I will show
you experimental study about anti-perovskite compounds
which shows negative thermal expansion (NTE) coefficient
around room temperature, reported by Takenaka et al..
The experimental results are about the behavior of spin and
local structure considered as an origin for the NTE, measured
by using neutron scattering techniques.
第五回: 2013年12月9日 (月) 16:30-18:30
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】 美藤正樹 (基礎科学研究系・教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-1/entry-540.html
【タイトル】 銅酸化物超伝導体の歪み効果
【概要】
物質に応力を加え、歪みを与えれば、格子に変調が起こり、電子の
電荷・スピンに起因する物理的多体効果に変調を加えることができる。
歪みの加え方には何通りかあるが、無配向結晶に無造作に応力を
加えても、物理的な考察を深めることはできない。物理的に意味の
ある研究をするために、
(1)単結晶もしくは粉末試料に対する静水圧力実験(圧力という物理量が使える)、
(2)単結晶試料の一軸応力・一軸圧縮実験、
(3)薄膜試料における基板とのミスマッチによるbiaxial strain,
(4)圧電素子上に堆積させた薄膜試料への引っ張り・圧縮実験などがある。
銅酸化物超伝導体の場合、これまで(1)の静水圧力実験が非常に
盛んに行われてきており、(2)と(3)の実験は数例のみである。
今回のセミナーではこれらの現状を紹介した後、我々が最近
取り組んでいる銅酸化物超伝導体の歪み効果に関する実験を紹介する。
第四回: 2013年11月11日 (月) 16:30-18:30
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第二会議室
【講演者】 小田勝 (基礎科学研究系・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-2/entry-2710.html
【タイトル】 コロイド状半導体ナノ結晶の光物性: 基礎から応用の将来展望まで
【概要】
化学反応を利用したボトムアップ方式により作製できる「コロイド状半導体
ナノ結晶」の寸法は,一般的な半導体ナノ構造物質より1〜2桁小さく,数nm
程度である。講演者の小田は,このような極微小半導体中の電子系により
創られる新たな光物性に着目し,このナノ結晶の寸法や形状を制御する化
学合法の開発と,光学実験による光物性の探索・制御に取り組んできた。
今回の講演では,このナノ結晶の基礎的な物性・物理を解説するとともに,
特に,単一ナノ結晶に対する顕微発光分光計測より,最近明らかとなりつつ
ある光物性を紹介したい。さらに,今後期待される融合研究や素子開発など
の展望について述べる予定である。
第三回: 2013年 10月7日 (月) 16:30-18:30
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第二会議室
【講演者】 松平和之 (電気電子工学研究系・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t3/t3-2/entry-548.html
【タイトル】 パイロクロア型Ir酸化物における金属絶縁体転移
【概要】
近年,三角格子を内包した強相関系物質において幾何学的
フラストレーションに起因した新奇な現象が見いだされ注目を
集めている。パイロクロア型酸化物A2M2O7はAおよびMサイト
共に正四面体が頂点共有した3次元ネットワーク構造を
有しており,幾何学的フラストレーションの研究に格好の舞台を
提供している。我々は2006年にパイロクロア型Ir酸化物
Ln2Ir2O7(Ln:希土類)において,金属絶縁体(MI)転移を
示すことを発見し,その機構解明,外場による応答,キャリア
ドープによる物性制御についての研究を展開している。
5d遷移金属酸化物は,強い電子相関効果が重要な役割を
持つ3d電子系とは異なり,スピン軌道相互作用と電子相関効果が
競合した新たな電子物性が期待されている。また,最近の
理論的研究からは,パイロクロア型Ir酸化物はトロポジカル
絶縁体,ワイル半金属等というキーワードで議論されている。
本セミナーにおいては,パイロクロア型Ir酸化物のMI転移の
概要について紹介する。
第二回: 2013年8月30日 (金) 16:00-18:00
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】 中村和磨 (基礎科学研究系・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-2/entry-2708.html
【タイトル】 第一原理GW計算を用いた物性研究
【概要】 第一原理電子構造計算による物性研究の最近の動向について
紹介する。これまでは、密度汎関数バンド計算に代表される
平均場計算が主流であったが、近年の計算機進展により、
第一原理の範疇で電子相関効果を直接的に取り込んだ計算が、
可能になってきている。講演では、グリーン関数法に基づく
第一原理計算のポイントを解説し、具体的な物質への応用研究
について述べる。特にGW近似によって取り込まれるプラズモン
素励起の低エネルギー電子物性への影響について議論する [1]。
[1] K. Nakamura, S. Sakai, R. Arita, and K. Kuroki, arXiv:1306.0354
第一回: 2013年7月23日 (火) 16:00-18:00
【場所】 九州工業大学戸畑キャンパス工学部第一会議室
【講演者】渡辺真仁 (基礎科学研究系・准教授) http://www.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t5/t5-2/entry-1142.html
【タイトル】 重い電子系における新しい量子臨界現象
【概要】 近年、Yb系およびCe系重い電子系において、スピンゆらぎの
量子臨界現象の枠組みに従わない、非従来型の量子臨界現象が
観測され、強相関電子系における大きな問題となっている。
最近、YbやCeの臨界価数ゆらぎが新しいタイプの量子臨界現象を
引き起こすことが理論的に提案され、非従来型の量子臨界現象を
統一的に説明する機構として注目を集めており、その実験的証拠も
観測されはじめている。講演では、遍歴電子系における量子臨界現象を
概観し、価数ゆらぎの量子臨界現象の最近の発展を紹介する。